卵子凍結について

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卵子凍結について

卵子凍結とは、卵巣から採取した卵子を凍結保存することをいいます。
卵子凍結は主に以下の2つの目的で行われます。

医学的適応

医学的適応とは、医学的に卵子凍結の必要性があると判断される場合に該当します。
例えば、悪性腫瘍などの治療によって卵巣機能が低下し、妊孕性(妊娠するための力)が失われると予測される場合です。
悪性腫瘍に対する治療は卵巣にダメージを与える可能性が高いため、治療を開始する前の卵子を凍結保存することにより、妊孕性を温 存します。
がんが完治して妊娠を望むときに、凍結保存しておいた卵子を融解します。 顕微授精を施行し、胚(受精卵)を作成して胚移植することにより妊娠が可能になります。

社会的適応

健康な女性が自らのライフプランに合わせて行う卵子凍結の需要が高まってきています。
パートナーの不在やキャリアプランといった様々な事情によって、妊娠が先になることが予想される場合に、若いときの卵子を保存しておくことができます。
妊娠を希望するなら、若いうちに妊娠・出産をすることが望ましいのですが、近年では女性の社会進出が進み、晩婚化が顕著になっています。

2011年の厚生労働省の調査によると、日本の女性の平均初婚年齢は、29.0歳となり、妊娠適齢期(20歳〜30歳くらい)と言われる20代を過ぎた後に結婚・妊娠を迎える人が多くなっています。
仕事に追われて、結婚や出産・パートナーについて時間も余裕もないという方もいると思います。
そうした中、年齢を重ねた時に妊娠が難しくなることを懸念する女性が増え、若いうちに質のいい卵子を凍結保存しておく「卵子凍結」が注目されるようになりました。 社会的な問題や病気により、妊娠率が低下してしまう人にとって卵子凍結は“希望をつなぐ手段”となっています。

ただし卵子凍結は卵子を融解し、その後「受精」というステップが必要になります。
さらにそこから妊娠・出産に至るまでには、長いプロセスが必要になります。

将来お子様をご希望の方は、環境が整い次第、自然に妊娠されることをまずは第一として、「社会的適応」を目的とした「卵子凍結」は、あくまでも保険のひとつとして捉えておくことをお勧めします。

卵子の老化について

20歳の時に排卵された卵子も、30歳の時に排卵された卵子も同じ体内にあったものですが、歳を重ねた分だけ30歳の時に排卵された卵子は、20歳のそれと比べて老化しています。
卵子は老化すると、染色体異常が増えて、妊娠できる可能性がある卵子の数も減少します。
また、うまく排卵して精子と受精しても、その後の発育が止まってしまったり、子宮に着床しても流産になってしまったりという確率も高くなります。

卵子の老化

卵子数の減少について

年齢を重ねる毎に卵子の数は減少していきます。卵子は月に約600個ずつ減っています。女性の身体は、毎月1000個のうちの1つ、最も感受性の高い卵子のみを排出し、残りは消滅・吸収(アポトーシス)します。
そして、卵子が減るスピードは37.5歳以降、2倍に加速することが分かっています。

卵子の絶対数が少なくなると、状態のよい卵子が得られにくくなるため、妊娠も起こりにくくなります。
生まれたときに700万個あった卵子は、20歳までに12万個、30歳で5万個と減り続け、40歳では5000個になってしまいます。閉経頃には1000~2000個くらいしかありません。

年齢を重ねるにつれて卵子の老化、また卵子数の減少や卵子1個あたりの妊娠率が下がっていくため、なるべく若い段階で卵子凍結を行っておくことが望ましいとされています。

卵子数の減少

卵子凍結のメリット・デメリット

メリット

悪性の腫瘍をわずらってしまった場合、治療の過程で外科的な治療や放射線療法を施すことで卵巣の機能が低下し、妊娠がしにくくなってしまうため(これを「医原性不妊」と言います)、治療前にあらかじめ卵子を凍結保存することで、妊娠率を維持することが期待できます。
また、妊娠につながりやすい年齢は20~35歳くらいで、35歳以降になると卵子の質は急激に低下、妊娠に至りにくくなると考えられています。
若いうちに凍結保存しておけば、採卵時の年齢のクオリティを持った卵子をとっておくことができます。
たとえば、30歳の時に採取した卵子を使えば、35歳で妊娠した場合でも30歳の時の卵子の質を保てるわけです。
妊娠を望んだときに排卵されている卵子に比べて、染色体異常や発育が止まるなどの問題が起きにくいことが期待できます。

デメリット

卵子凍結では、卵子の採取の際に卵巣の出血や感染症を引き起こすリスクがあります。
また、卵子凍結をすれば、いつでも妊娠・出産できるというわけではありません。
卵子凍結は卵子を凍結・融解するため、通常の卵子(新鮮卵子)に比べて受精卵の発育が止まりやすい傾向があります。
妊娠率や出産率は年齢とともに下がっていくもので、卵子を採取したときの年齢に依存します。また、融解した卵子を子宮に戻す年齢が上がれば、妊娠中に母体に起きる合併症のリスクが上がります。
さらに、卵子凍結は保険適用外の治療ですので、治療費が高額になりやすい点もあげられます。

副作用

効率良く採卵するために投与される「排卵誘発剤」の副作用として、「卵巣過剰刺激症候群」という合併症を起こす可能性があります。
複数の卵子が一度に育つと、血液中の水分が血管の外に漏れだして腹水が溜まり、卵巣が腫れます。血管の中は逆に脱水状態になり、腎臓の血液量が減って尿が出なくなっていきます。
また、起きる頻度は少ないですが、腟から器具を入れて卵子を採取する際に想定外のところに針先が当たり、出血する可能性があります。

卵子凍結のメリット・デメリット

採取する卵子の数

左右の卵巣それぞれから一度採卵することを、一つの治療サイクルと数えます。採取する卵子の数は、15個くらいを目標にします。
妊娠の可能性を上げつつ、排卵誘発剤によって起きる合併症のリスクをおさえられるためです。
卵巣機能が良い人は一度に15個の卵子が採れますが、機能が低下している人などは4個程度しか取れないケースも。
15個の卵子凍結を目指す場合には、2週間で1回の治療サイクルを、3~4回行わなければならないこともあります。
受精卵と違って、未受精卵から妊娠するには、数が必要です。1回の採卵で採れる卵子の数は、人によって大きく異なります。
多い人は15個くらい採れますが、中には1個、2個しか採れない人もいます。10個採卵できても、1個も妊娠につながらない可能性もあります。

採取する卵子の数

未受精卵の凍結保存 (卵子凍結)の妊娠率

採取された卵子のうち、凍結保存することが可能な卵子は成熟卵子のみです。
また、成熟卵子でも採卵時の年齢により、受精率、妊娠率に差があります。
妊娠率は、融解後に卵子が生存しており、精子と受精でき、さらにその受精卵の質が良好な場合の妊娠率となります。なお、年齢は卵子を採取した時点での年齢を示します。

  • ●凍結卵子融解後の卵子生存の確率については諸報告あり、
  • 将来、融解後の卵子生存の確率 80〜95%
    融解後の卵子に、精子を注入した場合の受精率 60〜80%
  • ●凍結卵子融解後に、卵子が生存、受精(顕微授精)し、質が良好な受精卵が確保できた場合の卵子1つ当たりの妊娠率
  • 30歳以下 35%程度
    31〜34歳 30%程度
    35〜37歳 25%程度
    38〜39歳 20%程度
    40歳以上 15%以下

よって、卵子の生存率とその後の着床率を考えると、5個以上(出来れば10個以上)の 卵子を凍結保存しておくことが望ましいということになります。

年齢制限について

凍結保存が可能な年齢や保存期間は医療機関によって異なりますが、日本生殖医学会が公表するガイドラインでは、「卵子の採卵は40歳未満まで」「凍結保存した卵子を体外受精などに用いるには45歳未満まで」と示されています。

社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン(日本生殖医学会)

1)加齢などの要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合には、未受精卵子あるいは卵巣組織(以下「未受精卵子等」という)を凍結保存することができる。

2)凍結・保存の対象者は成人した女性で、未受精卵子等の採取時の年齢は、40歳以上は推奨できない。また凍結保存した未受精卵子等の使用時の年齢は45歳以上は推奨できない。

当院での対応

原則として採卵するご年齢は満43歳の誕生日までとさせていただきます。 それ以上のご年齢でご希望される場合、医師の判断の上で実施できることもありますので、ご相談ください。

卵子凍結の流れ

➀排卵誘発
効率よく卵子を採取するために内服薬や注射などを使用して卵巣を刺激し、排卵誘発剤によって、複数の卵子の発育を促します。

➁採卵
麻酔を使用し、痛みを抑えた状態で膣から細長い針を刺し、卵巣から成熟した卵子を吸い出します。

➂卵子凍結
採取した卵子を、凍結による影響が最小限になるように保護し、ー196℃の超低温で凍結し、液体窒素タンクのなかで保管します。

排卵誘発
採卵
卵子凍結

卵子凍結から妊娠までの流れ

➀加温
凍結された卵子を、専用の液体に入れて温めます。

➁調整
卵子に負担がかからないように、段階的に眠っていた細胞を起こします。

➂受精・培養
顕微授精を行い、受精卵を培養します。順調に細胞分裂が進むか観察します。

➃胚移植
順調に育った受精卵を子宮内に移植します。無事に着床すれば、妊娠成立となります。

費用について

卵子凍結は保険診療ではなく自由診療のため、全額自己負担となります。
目安としては、クリニックや病院によってかかる費用は異なりますが、検査~採卵・保存で1回30万円~45万円ほどになります。卵子の保存にも、年間で1個あたり数万円の費用が発生します。

安心の保管体制

当クリニックは卵子凍結保管サービス『グレイスバンク』と提携しており、凍結された卵子は『グレイスバンク』の提携先である株式会社ステムセル研究所の大型タンクで一括保管されます。

株式会社ステムセル研究所(東証一部上場)は、さい帯血保管・幹細胞関連の研究開発を行う企業であり、その高度な保管システムは卵子凍結にも活用されています。
ステムセルの保管システムは23年間無事故を誇り、最新のモニタリング機器と厳重なセキュリティ設備であなたの大切な卵子をお預かりします。
将来、凍結した卵子を使って体外受精をする際は全国にある提携クリニックにて凍結卵子を利用した不妊治療を受けることができます。

『グレイスバンク』を運営する株式会社グレイスグループは、大手企業各社からの出資により、財務・経営基盤を安定させながら、長期間にわたって安心しておつきあいいただける卵子凍結事業を実現しています。

〈Point〉

  • 国内最大規模の細胞保管施設
  • 最新鋭の凍結保管技術
  • 24時間対応の監視・記録・緊急時体制
  • 突然の地震や津波にも強いエリア
  • 最も高いレベルの建築物耐震基準クリア
  • ALSOK社による24時間警備体制
保管体制

費用

 
初診検査パック 33,000円
≪検査内容≫

梅毒/B型肝炎/C型肝炎/HIV抗体/AMH/血液型/血算・凝固/超音波検査 ※感染症陽性は凍結不可

卵子凍結 パッケージプラン 385,000円(税抜350,000円)
5個以下 −50,000円
≪プラン内容≫

各種検査/排卵誘発剤/局部麻酔/採卵費用/初期凍結費用
・凍結保管に関してはグレイスバンクにて

※採卵誘発方法は当院に一任とさせていただきます。
※凍結する卵子の数で金額変更はありません。
※初回の採卵費用となります。2回目以降の採卵の場合は¥330,000(税抜¥300,000)となります。

診療科目