着床前胚染色体異数性検査
PGTとは
PGTとは体外で受精させた受精卵の染色体や遺伝子の検査を行うことです。 PGT(Preimplantation genetic testing)
日本語では「着床前診断」や「着床前検査」と呼ばれています。
PGTの分類
PGTには3種類の検査があります。
PGT-A
着床前胚染色体異数性検査 受精卵の染色体の本数の変化を調べる検査
体外で受精させた受精卵の染色体の本数の変化を調べる検査で、日本語では「着床前胚染色体異数性検査」と呼びます。
PGT-SR
着床前染色体構造異常検査 受精卵の染色体の構造の変化を調べる検査
PGT-M
着床前単一遺伝子病検査 受精卵の遺伝子の変化を調べる検査
他には、ご夫婦の染色体の構造に変化がある場合、受精卵の染色体の構造に変化がないか調べる
「PGT-SR」、重篤な遺伝性疾患の体質を持つ子を出産する可能性のあるご夫婦の場合に、
受精卵にその遺伝子の変化がみられるか調べる「PGT-M」があります。
PGT-についてのご説明
私たちヒト身体は約37兆個の細胞からできており、その細胞一つ一つの中に核が、さらにその中に46本の染色体があります。
自然流産の原因の内訳をみると、半数以上が染色体の本数の変化によるものとなっています。 その原因は、受精卵に起きた偶発的なものと、ご夫婦の染色体の構造変化に起因するものの2つがあり、大半が受精卵に起きた偶発的なものです。- 遺伝情報を伝える
- 23本の染色体が対となり合計46本で構成
- 父親と母親から1本ずつ受け継がれる
体を作る設計図
染色体は遺伝情報を伝える役割を持っており、46本の染色体の半分の23本はお父さんから、後の23本はお母さんから受け継いだものです。 そのうち1番から22番までの22対については、男性女性とも変わらないため「常染色体」と呼ばれ、残りの2本は「性染色体」と呼ばれ、女性ではX染色体が2本である「XX」、 男性ではX染色体とY染色体からなる「XY」となります。
染色体の変化について
染色体の数が46本より多かったり少なかったりすることを、「染色体の本数の変化」といいます。 受精卵の染色体の本数に変化がある場合、出生に至る場合もありますが、多くは妊娠が成立しないか流産になります。
自然流産の原因の内訳をみると、半数以上が染色体の本数の変化によるものとなっています。 その原因は、受精卵に起きた偶発的なものと、ご夫婦の染色体の構造変化に起因するものの2つがあり、大半が受精卵に起きた偶発的なものです。
母体の年齢が高くなると卵子の染色体の本数の変化の頻度が高くなる 一般的に母体の年齢が高くなると、体外受精をしても妊娠しないまたは流産する傾向が高くなり、これは年齢とともに卵子の染色体の本数が変化する頻度が高くなることと関連があるといわれています。
PGT-Aについてのご説明
顕微鏡で見た受精卵の形態によって、移植の優先順位を決定 形態に加えて、染色体の本数の変化をふまえて移植する受精卵の候補を絞る 従来は顕微鏡で見た受精卵の形態によって、移植の優先順位を決めていました。 PGT-Aを実施することで、形態に加えて染色体の本数の変化をふまえて移植する受精卵の候補を絞ることができるようになりました。 この図のケースでは、従来のやり方であれば4回目の移植で妊娠の可能性が高まるのに対して、 PGT-Aを実施することで、優先的に移植する受精卵が変わるため、1回目の移植で妊娠の可能性が高まることになります。
PGT-Aのメリット
移植あたりの妊娠率の向上 染色体の本数に変化がみられない受精卵の移植により、妊娠率が高まるため 妊娠までの期間を短縮できる可能性が考えらます。
移植あたりの妊娠率の向上が期待できます。 染色体の本数に変化がみられなかった受精卵の移植によって何度も移植を繰り返すことを回避でき、妊娠までの期間を短縮することができるのです。
妊娠あたりの流産率の低下 流産の可能性の高い受精卵の移植を避けられる 流産に伴う母体負担の軽減が期待できる
また、妊娠あたりの流産率の低下も期待できます。 流産の可能性の高い受精卵の移植を避けることができ、身体的・精神的負担の軽減にも繋がります。
長期の不妊治療に悩む方、高齢出産の方が増加傾向。 心身の負担を減らしつつ、妊娠成立の可能性を上げる。
晩婚化が進む昨今では、長期の不妊治療に臨む方・高齢出産の方が増加傾向にあります。 そのような中、身体的・精神的負担を減らしつつ妊娠成立の可能性を上げるPGT-Aは年々ニーズが高まっています。
PGT-Aの流れ
- 受診
- PGT-A実施前カウンセリング
- 体外受精
- 胚生検
- 染色体検査
- 結果報告
- カウンセリング
- 妊娠(フォローアップ)
結果をふまえたカウンセリングを受け、移植できる胚が決まった場合には胚移植へと進んでいきます。 胚移植が行われて妊娠に至った場合は、超音波検査や羊水検査などのフォローアップを受けることができます。
PGT-Aの検査結果について
PGT-Aの検査は、次世代シークエンサーという遺伝子を一度にたくさん解析できる機械を使って行われ、4つの結果に分類されて患者様に報告されます。
判定結果を4つに分類
正数性の胚|染色体の本数に変化がないと推測される胚 モザイク胚|染色体の本数に変化がない細胞と変化がある細胞が様々な割合で混ざった胚 異数性の胚|染色体の本数に変化がある胚 判定不能の胚|何らかの原因で解析ができなかった胚PGT-Aの検査結果の見方
[正数性の胚の検査結果]グラフ 染色体の本数に変化がみられない例 常染色体・性染色体ともに本数に変化がみられず、移植候補となる 染色体の本数の変化はこのようにグラフで示されます。 縦軸は染色体の本数、横軸は染色体番号が記されています。 太線が検査結果の染色体の本数であり、1番から22番まで染色体が2本ずつあることがわかります。 つまりこの結果は、染色体の本数に変化がみられない「正数性の胚」と判定され移植の候補となります。
[異数性の胚の検査結果]グラフ
16番染色体が1本多く、移植候補から外される 染色体の本数に変化がみられる例 このグラフでは16番の染色体のみ3本あることがみてわかります。 これは16番染色体が1本多いことを示していますので、「異数性の胚」と判定され移植の候補からは外されることになります。
PGT-A検査を実施できない例
まずPGT-Aを予定していても、受精卵が胚盤胞にならなかった場合は検査自体ができません。 また、胚盤胞の形態が良くない場合は検査を見送る場合があります。
PGT-A解析結果のご留意点
まずはじめに、PGT-A検査技術には限界があり、誤判定率が5~15%あるといわれています。 その理由に、PGT-Aは将来胎盤になる細胞の一部を成形して行う行う検査であり、 将来胎児になる部分と結果が異なる場合があること、 微細な染色体の変化や一部の倍数性の変化については通常の次世代シークエンサーの解析方法では検出できないこともあります。
また、この検査は性染色体も検査の対象となりますが性別をお伝えすることができず、当然産み分けはできません。
解析結果次第ではいずれの胚も移植できない場合もあります。
さらに、解析結果が全て異数性のこともあり、いずれの胚も移植に至らないケースや判定不能の結果もありえます。
モザイク胚の移植を検討することも
また、正数性の胚がない場合にはモザイク胚の移植を検討することもあります。 この場合、染色体の変化の割合やどの染色体番号のものかによって、胚を移植するかしないかを検討することになります。 モザイク胚で健康な生児を得たケースは多く報告されています。 一方で、正数性の胚に比べると妊娠率の低下や流産率の上昇はありえます。
患者様本人の偶発的な染色体の変化が見つかる場合も その他、検査の結果、患者様本人の偶発的な染色体の変化が見つかるケースもあります。
様々なケースがあり、患者様の期待に沿う検査結果にならないこともあります。 妊娠成立に向けて、専門家と十分に話し合ったうえで、ご判断ください。 このように様々なケースがあり、患者様の期待に沿う検査結果にならないこともあります。 妊娠成立に向けて、専門家と十分に話し合ったうえで、ご判断ください。
PGT-A実施後のご留意点
正数性の胚を移植しても妊娠・出産に至らない場合も
そして、仮に正数性の胚を移植したとしても「生検による胚へのダメージ」や「染色体以外の原因」で妊娠や出産に至らない場合もあります。
妊娠後のフォローアップの実施が重要
超音波検査や羊水検査など 最後に、妊娠後のフォローアップの実施が重要です。 超音波検査や、胎児由来の細胞を調べる羊水検査などが可能です。
PGT-Aの実施にあたり
PGT-Aは検査技術の限界はあるものの、妊娠率の向上や、流産率の低下が期待できる検査 これらの内容をご理解いただき、ご納得の上で検査をお受けください。 ご不明な点がございましたら、当院までお問い合わせください。